Y先生の乙女な不安-7
---ハルが好き。
ハルに会いたい。
ハルに触れたい、触れてほしい。
いつも素直にそう言えば良かった。
『先生』
あまりにも自然に私を呼んだその声。
廊下ですれ違っても、授業中目が合っても、私を何の感情もなく見ていたハル。
最初は演技だと思っていたけれど、私は本当はどんどん不安になっていた。
…もう私になんて、飽きちゃったのかな。
だって演技にしては自然過ぎる。
あまりにも徹底している。
まさか、試験前には既に別れるつもりだったとか…?
そもそも、私とハルはちゃんと付き合っていたのだろうか?
私ばっかりその気になっていただけで、ハルにとってはただの遊びで、からかわれていただけなんじゃないだろうか?
だって、ハルの年の子からしたら私なんてはっきり言っておばさんだ。
あったかいハルの言葉を疑うわけではないけれど、自分に自信なんて持てなくて、不安がどんどん募っていく。
一度思い付いてしまうと、後ろ向きな考えはいつまでも消えない。
気になるならば直接聞いてみれば良いのだ。
でも…それはできない。
私はハルの冷静な瞳を思い出す。
あんな表情で見られたら、何も聞けないよ…。
普段ならばこんな風に確かめもせずに考え込んだりしない。
推測だけでここまで悲しくなったりしない。
自分が情けなくてたまらない。
それは、全部ハルだから。
ハルを好き過ぎて、私は私でいられなくなる。
いつの間にこんなに好きになっちゃったんだろ。
もう、一緒にいられないのかな…。
「由希ちゃん見ーっけ。」
一番聞きたかった声と共に背中がふわりと暖かくなる。
「ハ、ル…?」
後ろからしっかりと抱きしめられ、私は混乱して下を向く。
力強い腕が私を捕えているのを見て、胸の奥が熱くなり、私の頬を涙が伝った。
「俺、もーほんっとマジありえないくらい頑張ったし…ってうわ!なんで泣いてんの?!」
ハルが慌てて前に回り、私の顔を覗き込んだ。
机を挟んで向かい合うハルの心配そうな顔に、心から安堵する。