Y先生の乙女な不安-5
「…ふっ…ん、ぁ…」
舌が交わる音がやけに耳に響く。
「あ、…んっ…」
恥ずかしくて愛しくて、意味も無く涙が出そう…。
長いキスを終え、名残惜し気に互いの唇が離れる。
つい熱い息を漏らす私を、ハルが見て笑った。
「エロい顔。」
言われてハッと我に返り、赤面する。
そんな私を見てハルはまた微笑んで、私の頭をくしゃっと撫でる。
そんな優しい目で、見ないで。
そんなにあったかく、触らないで。
幸せ過ぎて、嬉しくて苦しくて、恐くなる。
「これでとりあえず頑張るから。」
そう言って私の頬を撫で、ハルはあっさり職員室を出ていく。
ハルの足音が聞こえなくなってしばらくして、私はすとんと椅子に座った。
ハルと離れたときに必ず生まれる自分の中の感情から目を逸らし、机に向かう。
頑張らなきゃ。
私は先生。
私は大人。
感情に流されずに仕事が出来る。
ハルのことなんか気にしてないって顔が出来るから。
…だから…
だから私のことなんて気にせずに、ハル、頑張って。
***
それからの放課後、私の隣からハルがいなくなった。
毎朝送られてきていたメールも、ぱったりと来なくなった。
授業中も、目が合うことはない。
ここまで徹底的に関わりがなくなってしまうと、私とハルがあんな風に過ごしていたことも、全部夢だったような気がしてしまう。
…まったく、自分に呆れてしまう。
自分で言ったくせに、ハルが遠いと不安になるなんて。
いつもは素直に思いを伝えることもしないで、離れると近づきたくなるなんて、我が儘だ。
「今日やったプリントなど、何か質問がある人はいる?」
補習授業のクラス、今日もまともに目を合わせない生徒達に呼びかける。