Y先生の乙女な不安-4
…だって、ハルのこと好きなんだもん。
その目が私を見るだけで心がすごく苦しくなるくらい好きなハルが、私に触るんだもの。
…気持ち良くないわけ、ない。
ハルは口ごもる私を見て、満足気に笑った。
私の考えてることなんて全部分かってるみたいな、ハルの憎たらしい笑顔が悔しい。
…負けないんだからっ。
私は、曲がりなりにも先生なんだから!
「と、とにかく、試験が終わるまではそっちに集中しなさい!」
恥ずかしさをごまかすように、わざと命令口調で言う。
「え、もしかして…試験終わるまで…おあ、ずけ?」
「当然でしょ。」
「…はぁ!?由希ちゃん、まだ試験まで一週間以上あんだよ!?我慢できるわけねぇじゃん!」
「だってハルに真面目にやってもらいたいし。」
ぴくっ、とハルの表情が止まる。
あ、れ…なんかまずいこと言ったかな。
「…へぇー、由希ちゃんは俺のこと信じてないわけだ。」
「べ、別にそういうわけじゃ…」
「いーよ?全っ然余裕。」
つい後ずさってしまう私を挑戦的に見下ろす。
逆光の中の強い眼差しに、なんだか見とれてしまう。
「全教科75以上とってやる。そんでいっちばん成績悪い由希ちゃんの世界史は、80とる。それで文句ないっしょ?」
その言葉で、今までのハルの点数が、私の頭の中に次々と浮かんでは消える。
これまでを考えると…私がハルだったら、全教科75以上っていうのは無理かも。
…と、思ったのが表情に出てしまったのか、ハルがむっとした顔をする。
「つーかさ、俺ばっかり頑張るのずるくない?」
「私だって一生懸命テスト作るわよ?」
「そーいうんじゃなくて、さ…。」
ハルは独り言のようにぼそっと呟いて、唇が触れそうな程近い距離まで顔を近付けた。
単純な私の心臓は、すぐさま忙しく動き出す。
「テストが終わったら、由希ちゃんにも頑張ってもらうから。」
「が、頑張るって、何を…。」
「分かってるくせに。」
ハルは妖しく微笑んで、もう一度耳元に唇を寄せた。
「手加減しねぇから。覚悟しといて。」
腰に直接響く、ハルの声。
低く囁いたかと思うと、深く口付けられる。