SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 B-2
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家に向かう間、ヤマトは何も言わずにぎゅっと私の手を握っていた。
あったかくて少し汗ばんだ手。
私たちは誰よりも親しかったけど、手を繋いだことなんて今まで一度もなかった。
ヤマトは、セックスをするだけの女の子にはいつもこんなふうに優しいんだろうか。
私は―――
前よりもヤマトに近づいたの?それとも――遠ざかったの?
答えを知るのが怖くて、繋いだ手にキュッと力を込めた。
初めて入るヤマトの家――。
家族が帰宅している様子はなく、リビングはシンと静まりかえっている。
ありえないくらいバクバクしている心臓の音が聞こえてしまいそうで、私はせわしなく咳ばらいをした。
「――今日オカン、パートで遅いねん……」
「………あ…う、うん」
ヤマトのさりげないメッセージにいちいちドキドキしてしまう。
「俺の部屋、上やし」
手を繋いだまま冷蔵庫からペットボトルのジュースを1本取って、ヤマトは私を二階へと案内した。
誰も家にいないのに、階段を忍び足で昇っている自分に気付く。
私は多分、後ろめたいのだ。
自分で望んだことだとはいえ、こんなセックスは間違ってる。
全てが終わってこの階段を降りる時、私は前よりもっとつらくなっているだろう。
―――それでもいい。
一度っきりでいいから、私はヤマトの腕の中で女になるのだ。
部屋に入るなり、扉に身体を押し付けられるようにして少し強引に唇を奪われた。
「……ん……」
さっきよりも明確な意思を持った能動的なキス―――。