ハニードリッパー7-1
不思議な気分だった。
見知らぬ田舎の道を私はこの世で一番嫌いな女とトラックで走っている。
トラックの所持者が誰なのか知らないけれど、ケイジたちはこのトラックに機材を積んで移動する。
よく見慣れたトラックだった。
ポンコツでペンキが剥げ、けたたましい音がするしガタガタと縦に揺れる。
リタの運転が荒いせいなのかも知れない…
荷台がちょっと狭く、後部にも座席があって合計6人乗れる変わったタイプだった。
そして社会人な私は気がついていた。
リタは私に何か話したそうにしていて、ちらちらこっちを見てはタバコを蒸かす。
私は社会人休業中なので、分かっていたけど知らん顔した。
本当は何か話しかけて空気を和ませるのが社会人なのだ…
[ あなた、いつからファンなの? ]
あまりに気まずいので話しかけてやった。
リタは片方だけ眉を上げて、前を見たまましばらく考えてから
[ …そんなんじゃないよ ]
腹が立つからそのまま何も返さなかった。
あんただってこんなとこまでついて来て…
ただの追っかけじゃんっ!
[ あのさ… ]
リタは前を向いたままで、何か言いかけた。
[ 私が嫌いでしょ? ]
な…何を言い出すかと思えば…
[ ……嫌い ]
なぜか私は素直にそう答えてしまった。
だからどうなのよ?
[ ふうん… ]
空気はますます重くなる。
でも、嫌いなものは仕方がない…
それから私たちは言葉もなく買い物を済ませて、さっさと戻ってきた。