ハニードリッパー6-3
[ あたし行くよ… ]
何?…
トンビに油揚げ?
この女…今さらになって私の提案を横取りする気!?…
[ じゃ…リタとミキで行ってきてくれ ]
ペンネさんがお金を差し出した。
[ いいわよ、お買い物ったって知れてるし…
私、お邪魔しちゃってるでしょ? ]
[ いいじゃん、経費は経費だしさぁ…
運転はアタシがするから飯はミキがよろしく… ]
リタはまだお酒が残っていて、気だるそうに言った。
馴れ馴れしく呼ぶなよっ!
あなただって居候じゃないのよ。
…って、えっ?
もしかして…
リタと二人っきり?
しかも二日酔いのリタが運転するトラックで?…
いやぁっ!
絶対、イヤっ!
でも…
言えないじゃない、こんなとこまで来て子供みたいに…
みんなライブを前にして時間が惜しいのよ。
分かってるけど…
何で酔っ払いリタと二人っきりのドライブなのよォっ!
私たちが兵隊食を済ませている間にリタはふらふらと起き上がって出かける準備をする。
いつもどこか気だるそうで、私はそもそもこの女のこんなところが嫌いなのだと思った。
だけど…
自分から言い出したんだから決して嫌なわけじゃないと思う。
ロッカーズって、これが普通なのだろうか?
ケイジもどこかこんなところがある…
ケイジとリタは同類で私は違う人種?
もうイヤっ!
もう二度とこの女のいる所に来たくない。
リタは私を見て、猫のマスコットがついた鍵をぐるぐる回すとガレージに停めてあるトラックに乗り込んだ。
私はしかたなく、隣に乗ってバタンと不機嫌そうにドアを閉めた。
トラックって席が高くて怖い。
酒臭いリタの運転ならなお怖い。
シートも何ていうのか…硬くて90度。
ギィっと音を立ててリタはエンジンをかけるとタバコをくわえる。
黙ってラクダの絵が書いてある箱をポイと放り出していきなり猛発進した。
いいところを見せたいばっかでお料理なんかするなんて言わなきゃよかった…
私は心底、自分の愚かさを後悔したのだった。