彼女達からの10のお願い-2
「子供は?私の子供はどこ?あなたがどこかに連れていったんでしょう!早く返して!この泥棒猫!!」
「いい加減にして下さい!何回言ったらわかるんですか!あなたの子供なんて顔すら見たことないのに!」
心の中の何かがどんどん堕ちていく。
夢に胸を膨らませて就いたこの職。
あの気持ちはもうどこに行ったのか。
何もかもが憂鬱だ。
「…ねぇ」
「…何?」
「これ」
「…」
渡されたのは一枚の紙。
書いてあるのは、『アルツハイマー患者からの10のお願い』。
《アルツハイマー患者からの10のお願い
1.我慢して下さい。
私は脳の病気を持った、自分ではどうして良いかわからない患者です。
2.話し掛けて下さい。
返事はうまく出来なくても、あなたの声は聞こえ、言葉はわかります。
3.親切にして下さい。
毎日が絶望的な戦いです。あなたの優しさが必要です。
4.気持ちを思いやって下さい。
私の感情はしっかり残っているのです。
5.人としての尊厳を認めて下さい。
私も寝たきりの人も、最期まで人間として生きたいと願っています。
6.昔の私を思い出して下さい。
かつては健康で、人生は愛と笑いでいっぱいでした。
7.私をわかって下さい。
みんなに忘れられていないかと不安です。家族として友人として接して下さい。
8.私の将来を思って下さい。
先は暗く見えるかもしれませんが、私はいつも明日への希望でいっぱいです。
9.私の為に祈って下さい。
霧の中で彷徨っているような私には、どのような同情よりあなたの存在が大切なのです。
10.私を愛して下さい。
愛こそが私を永遠の光で満たしてくれます。》