エリザベスドール6-1
「犯人が着ていた衣類でしょうか?」
「多分ね。父親のジョナサンさんによると、犯人は…人形の姿をした化け物だそうだ」
「エ!?」
驚くルーク。
「しかも犯人は、君の恋人らしい」
「エリザベスだ」
「エリザベス?」
「そうです。その化け物人形と言うのは、エリザベスの事なんです」
「エリザベスと言うのは、君が持っていた人形の事だったね? まさか、あの人形が犯人だって言うのかね?」
「だから、そのまさかなんです」
「作りモノの人形が動くなんて、信じられない」
「でも実際に、人形は歩いたり喋ったり…
まるで…、生きているかのように動くんです」
「ほう、生きてるかのようにね」
ルークは呆れた表情で警部の顔を見つめた。
「警部さん、信じてくれないでしょう?」
「作りモノの人形が動くなんて、常識では考えられないからネェ」
「警部はまだ、実物を見てないから信じろって言う方が無理かもね。
前に僕はエリザベスが動くのを見たし…
キャサリンなんか、危うく殺されそうになって放心状態になっているじゃないですか?」
「うーん!」
頭を掻く警部。
「ジミーの件は、何か手掛かり掴んでますか?」
「ジミー・ゴールドの殺害の件か。まだだよ」
「そうですか」
「まさか君ィ、あの事件の犯人も…エリザベス人形だと言うのかね?」
「ええ」
「殺害の動機は?」
「僕の勘ですが、自分を棄てようとするジミーに怒りを感じたんだと思います」
ジッと考える警部。
「なるほどね。君には悪いが、警察としては信じるワケにはゆかない。
一応は、参考として覚えておくけどね」
「…」
「君のガールフレンドが早く元気になる事を、祈ってるよ」
「ありがとうございます」
その後、簡単な聴取を済ませるとモリス警部は帰った。
ルークは憮然とした表情で警部を見送った。
自分たちが奇怪な人形に遭遇しているのに、警察は信じてくれない。
何だか歯がゆい気分である。