無味『偽』燥-4
『桜』という一文字にどのようなイメージを抱くだろうか。親しき人と結ばれる、そんなイメージが強いと思うが、僕――当時は格好付けてオレと言っていたが――はそんな良いイメージはない。むしろ悪いイメージしかないのだ。唯一、親友と呼べた者が死ぬ為に選んだ樹が桜の樹だったからだ。
『桜の樹と……〜ある友人の日記〜』
『○月×日・△曜日
二年生になってから、すでに一ヵ月が過ぎようとしている。新たな生活を望んだつもりだったが、現実は厳しかった。一年の頃と何一つ変わらない。
いじめがまた続いている。たった三文字だけど、その重さといったら……。助けてくれるものもいない。
僕の心身ともに助けてくれる両親でさえ、自分達の離婚調停で頭が一杯で助けてさえくれない。
僕は誰に助けを求めれば良い? 救いを求めれば良い?
それをずっと考えていた。友達や両親の心の中に僕という存在はどこにもいない。ならば、死ぬしか方法がない』
『○月□日・◇曜日
死ぬことが怖くて、何度も躊躇った。僕は死んでも良いのか、死ぬべき存在なのか、と……。
でも、いじめから解放してもらうには、死ぬしかないのだ。
友達も両親もいないのだから、死んでも構わない。
もう、いいや。
さよなら』
そして、彼は校内の――彼が好きだった――桜の樹にぶらさがっているところを発見された。
知ったときはショックだったが、葬式の時に見せてもらった日記を見て、さらに衝撃を受けた。オレはおまえにとって、友達ではないのか? 親友ではないのか? それを自問自答し続けたが、結局答えは出なかった。
大人になった今でも考えることがある。どういう存在を友達といい、親友というのか。だが、最近その答えを見いだせた気がする。それは――――。
End