“異聞" 老木との約束-1
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「 まあ 」
慶次を包み込んだ花吹雪と、
そんな花吹雪に無邪気な笑顔を浮かべる慶次に
まつはくすりと 微笑みを浮かべた。
「 それがいい 」
「 え? 」
慶次の言葉に 今度は一瞬の戸惑いを浮かべるまつ。
「 その笑顔がなによりの馳走です 」
そう言う慶次の顔は満足そうな、もののふと言うよりも 少年のような無邪気さに満ちていた。
「・・・・・」
そしてまつの心臓の鼓動が一瞬高鳴ったような気がした。
( 慶次殿・・・・ )
今まで心の奥に溜め込んでいた感情の波が一気に溢れ出たような感覚。
まつは無言でその感覚に身を委ねつつも、
静かに両手を背中に回し
帯に手をかけた。
「 !!! おまつ殿・・・・・ 」
「・・・このような笑顔だけでは足りませぬ。私の想いは・・・・」
風はやんでいた。
花吹雪も収まっている月夜の下、
ただ帯を解いていく音だけが静かに響く。
―――シュル・・・シュルシュル
―――パサッ・・トサッ・・・パサッ
ただ無言でまつの挙動を見守っていた慶次の瞳が一気に拡大した。
桜の木を背景に 慶次の目に飛び込んできたのは、
今まで身につけていた桜の花模様の小袖を脱ぎ捨て、
艶やかなる黒髪をたなびかせながらも、白くきめ細かな絹の如き肌に包まれた
まつのたおやかな肢体――――