“異聞" 老木との約束-2
「 馳走と申すのであれば・・・・・寧ろこの私を・・・」
両手で胸元を隠しつつも、まっすぐ憂いの目で見つめてくるまつに
流石の慶次も一瞬圧倒された。
無理もない。
夢にまで見た永遠の恋人の肢体が
夢の中で暖めてきたものと寸分違わぬ形で
目の前に立っているのだから。
そしてまつもまた自分がここまでの行動ができることに内心軽い驚きを感じつつも、
今は心の赴くままに自ら身体を開く自分に
ある種の喜びさえ感じているくらいだった。
もっとも今の彼女が無意識にも見せる“羞じらい"の風情も、
男から見れば誘っているのと同じ効果がある。
いわば、どのような男でも抗えない程の魅力に満ち満ちたものであった。
そして、それは 木石ではない 慶次にも言えることであった――――
ここで、2人の間に漂っていた僅かに緊張した空間は破られる。
( !!! )
気付けはまつの体は、
慶次の逞しい腕に抱きすくめられていた。
同時にまつの紅色の唇は、慶次のそれによって覆い被せられている。
本当に、一瞬の出来事だった。