“異聞" 老木との約束-12
「はっ・・はっ・・・はっ・・・」
白濁液を自らの中に注ぎ込まれるたびに、まつの息づかいは荒くなる。
この後 慶次の厚い胸板に覆い被さるようにして
まつは心地善き陶然さを伴って その身を預けていた。
微かにその息遣いも荒いようだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
いつしか呼吸も落ち着きを取り戻していた。互いの胸の鼓動を直に感じつつ、2人は無言でいる。
先程まで花吹雪を巻き起こしていた 風も 微風に変わっていた。
微風のおかけで 辺りには再び桜の香りが満ち始めていた。
その薫りを胸の奥底にまで吸い込みつつ、
まつの心に去来するのは “充足感"――――
慶次と結ばれることが ここまで心地好く、甘美な思いをもたらしてくれるとは。 予想もしていないことであった。
そして 慶次もまた同じような思いを抱いてくれている。
言葉には現さなくても 今のまつには分かる。
慶次と身体を重ねたまつだからこそ分かる。
(・・・・これが 本当に“身も心も通じあった"ということ。
こんな気持ち・・・)
今のまつには、肌を重ねあわせている慶次の汗も体臭もいとおしい。
(・・・この老木 )
まつは何気に自分達の上で花を咲かせている“慶次の旧友"の方に視線を移した。