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『Summer Night's Dream』
【青春 恋愛小説】

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『Summer Night's Dream』その2-4

「学校の怪談を、でっち上げる」


作戦はこうだ。
誰もいない夜の旧校舎で写真を撮りまくり、何が映っていようとなかろうと、その場で細工をしてごまかせばそれっぽいものが出来上がる。つまり、本当に心霊写真が移っていれば万々歳だし、たとえそうでなくとも近代技術の力でどうにかしようという腹だ。
真実かどうかなんてのは、この際どうでもいい。結果として皆がハッピーになれれば。
埋め合わせのネタさえ掴めば、部長の気分を損ねる心配はない。むしろ、こっちの方が彼にとっては重要な訳だから喜ばれることはあっても、怒られることはまずないだろう。アメが一袋あっても足りないくらいだ。

だったらどうして孝文まで駆り出したのか。そう聞かれれば微妙なところで、陽介としてもコイツに何ができるのか、いなくても同じなのかと思うことはある。
トータルで言えば7対3くらいの割合でいなくてもいいような気がするが、そこはグアムの件があったので居てもらおうという結論にいたった。
最悪、毛布にでもくるまってお化け役にでもなってもらえばいい。


「そういう訳で、夜にも強くて安全なお前が必要なんだ。力を貸してくれ」


適当なことを言って持ち上げると、孝文はあっさりと納得して、


「しょうがねぇな」


と言って付き合ってくれることになった。持つべき物は、都合のいい友人である。



残暑というには、あまりにも熱っぽい残滓が残る9月の空だった。
正門を乗り越え、昼間走り回っていたグラウンドを抜け、新校舎を横手に通り過ぎた。
宿直の先生がいるとしたら、新校舎の方だと思われるので見つからないように塀に沿って歩き続けた。

目の前に昨日と同様にそびえ立つ旧校舎を捉えた時、三階の窓が一瞬だけ光った様な気がした。


「どうした?」


足を止めた陽介を追い抜いて孝文が振り返った。


「あ、いや、なんでも……」


実際、改めて見ると旧校舎は夜の闇に同化し、ぽつねんと建っているだけだった。
その闇が、まるで昨日の出来事を全て飲み込んでしまったかにさえ思えた。
陽介は首を振って、再び歩き出した。


階段を上がり、まだ借りっぱなしのままだった鍵を使って、陽介達は中に入った。
夜の学校の独特な空気が忍び寄ってくる。威圧感にも似た何かが胸に押し寄せ、脳に感じるはずのない冷気を錯覚させた。
チラリと横を見ると、すでに帰りたいという顔をした孝文が腕を抱いて震えていたが、これから本当の恐怖が始まるのだ。音楽室とかトイレとかに行って写真を撮りまくるのだからこんな所でびびってもらっては困る。


「お前、先に歩けよ」


完全に怖じ気づいた孝文がそう言って陽介を前に促した。
先に立って走り出してやろうかと思ったが、そんなことをして泣き出されでもしたらさすがに悪いので、懐中電灯の灯りを頼りにゆっくりと進んだ。
中程まで来て足を止める。


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