再生の刻-4
「ハッ!」
その時、少女は目を覚ました。
「…ハッ!ハッ!…はぁッ…」
小刻みに震える身体。
「…はぁッ…はぁッ…何?今の…」
荒い息と滲む汗。彼女には、頭の中で繰り広げられたモノが何故なのか分からない。
しばらく経ち、ようやく夢なのだと理解した少女は、もう1度眠ろうとベッドに潜り込んだ。
だが、夢での出来事があまりにも生々しく感じてしまい、結局眠ることが出来ない。
この日以来、少女は同じ夢を何度も見るようになった。
「クソッ!」
悪夢を初めて見た日から数日経ったある日、少女は焦燥の表情を浮かべてベッドから跳ね起きる。彼女は、部屋を出て階段を降りていった。
足は店へと向っていく。
カウンター下に設けてある冷蔵庫。庫内にはミルクや紅茶が収められていたが、そのもっと奥にスコッチの瓶が未開封のまま置かれていた。
この店を任される時、男から──どうしても眠れぬ際は、これを飲むといい─と云われて渡されたモノだ。
──今日ぐらい、いいわよね。
少女はアルミのカバーを取って現れた栓を抜き、グラスへと注ぎ入れる。
──へえ。きれい…。
琥珀色の液体。少女には、その色が艶やかに思えた。
グラスを傾け、半分ほどを口含むと、口の中に辛みとしびれが広がった。
──吐き出したい。でも…。
少女は一気に喉の奥へと流し込む。
「…ウッ!ゴホッ!…」
途端に喉をおそう焼け付くような感触。耐えきれずに彼女はむせた。同時に腹の中が熱くなっていく。
「…ふぅーッ!」
アルコールが体内を駆けめぐる。少女の五感は次第に鈍り、目が回りだした。
「あ…」
少女はふらふらした後、崩れるようにその場に倒れて眠ってしまった。
ある昼下がり。
男が訪ねてきてからのひと月ほど、少女は相変わらず眠れぬ日々を過ごしていた。
とうの昔にスコッチは底をついた。今はただ、誰もこない店のカウンターで眠るのが日課となっていた。
黄昏時を過ぎ、湖のすべてが朱色にもえている。誰も居ない店内も、切り取られた夕陽の赤に染まっていた。
「夕方か…」
今日も誰も来なかった。少女は店を閉めて2階へと上がった。
シャワーを浴びようと行きかけた時、それが目についた。
小さな包み──真実の花の種。