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【純愛 恋愛小説】

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「ねぇ、龍斗。たまには全然違う畑でリリック書いてみたら?」

「違う畑?」

「例えば“恋愛”とか」

「えーっ!?俺そういう恋愛ネタのラップとか大嫌いだし吐き気するし…」

「龍斗がそういうの嫌いってのは分かるけどさ、でもやってみる価値はあるんじゃない?今まで以上に売れるかもよ?」

「セルアウトかよー…」

「そこまでは行かないけどさ、逆に普段やらないジャンルでどこまでいけるか、これも挑戦だよ」

「んー…」

「じゃ、来週末まで書き上げてね?」

「えーっ!」

「期待してるよ〜」

「そんなぁ…」



龍斗のリリックのテーマはいつも重たいもので、政治や宗教、経済、戦争、社会情勢、深層心理…など、知識的なテーマが多い。

これは“安っぽいポップな売れ線は十分過ぎる程に多いから、俺はそうじゃないことを吐く”っていう信念から。



そのせいか彼がつるんでいる仲間も同様で、やはりそのせいか大きなセールスには繋がっていない。

ただそれでも地道にイベントに参加したり作品を出したり客演をしたりで、その道ではそこそこ名が通って来ている。

ジャンルでいえば、アンダーグラウンド・ヒップホップとかアブストなのかな。



私といえば同じ高校、大学といえど龍斗みたいに没頭出来るものは無く、何となく学校行って何となくバイトして…みたいな、そんな生活。

だから正直、昔から龍斗が羨ましかった。

あそこまで何かに没頭出来るなんて私には考えられない。

龍斗のリリックにダメ出しをすることもあるけど、それよかその姿勢そのものには憧れざるを得ない。

私なんか…口出し出来る立場じゃないのにな…。



でも龍斗は不満一つ言わない。
寧ろなんだかんだ良いながら私の意見に真剣に耳を傾けてくれる。
そして取り入れてくれる。



そういう時、たまらなく嬉しい。
龍斗に必要とされてる気がして。
少しでも龍斗と深く繋がっている気がして。

この前アルバムを出した時なんて、クレジットの最後のspecial thanxに“…k-z、DJ TIME、DJ H8、紅音ちゃん、MC大道…”って私の名前も入れてくれてたし。


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