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涙の果て
【青春 恋愛小説】

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涙の果て-2

一気に視界が開けた。
最高の景色。
青空の下、空気は澄んでいた。
いつもは霞みがかって見えない山も今日はくっきりと見える。
あたしは柵に肘をのせ、両手の甲で顎を支えて先輩を待った。
静かだった。
静か過ぎて、ホントにあたしは此処に存在するのかと疑いたくなってしまう。
と、咄嗟にガチャンと音がしてあたしは現実世界に引き戻された気分になった。
振り返ると松浦先輩が立っていた。
「アンタ?呼んだの」
「あ、ハイ。そうです」
緊張なんてしない。
あたしはそういう女だから。
「此処の場所、いーよね」
「え?」
突然の言葉に不意を突かれた。
「俺よくサボりに来てんだ。ヘアピンとかで鍵開けて」
「…いーんですか?生徒会長がサボっちゃって」
「ははっ、いーのいーの。仕事すればじゅーぶん」
そう言って先輩は微笑む。
「……先輩」
「あのさ」
…あたしに何も言わせないつもりですか。
「悪いけど」
「…………」
「話は聞けない」
「…なんでですか」
先輩は全てを悟っているような顔であたしを見る。
「アンタの顔見ればわかる。つーか此処告白スポットだし。俺が今の彼女に告られたのも此処だったし」
「…そうだった…」
そうだ、此処告白スポットだったんだ。
忘れてたよバカ。
「ごめんね。だけどメールぐらいならしてあげるから」
「…そんなに彼女好きなんですか」
「…なんで?」
「あたしの方が先輩幸せにしてあげられる」
何言ってんのあたし。
「…幸せかどうかなんて本人が決める事だろ。好きでもない奴と一緒にいたって俺は幸せにはなれない。だからアンタとは…」
わかってる。
わかってるよ先輩。
「…ごめんなさい先輩、変な事言って…。
あたし帰ります。さよなら!」
泣き顔を見られるのが恥ずかしくて、走って1階まで降りた。
その後は学校から一番近くの公園に入って1人で泣いた。


どの位の時間が過ぎただろう。
軽く30分くらいは経ったんじゃないか。
こんなに泣いたのは初めてだった。
あたしはこんなに松浦先輩が好きだったんだ。
初めて手に入らなかったモノ。
それが凄くショックで、例えようもないぐらいショックで。
どうしようもなかった。
″〇×公園に今すぐ″
と佐藤君にメールをした。
彼はすぐに来た。
「七瀬…ごめん。ムリだったよ…ってうわ!お前…」
「見ないでぇ…すんごいブサイクだから今…」
「なぁ七瀬、考えたんだけどさ」
「…何よ」
「…敗者同士付き合おっか」
「あぁ…良いねそれ」


凄く欲しかったモノを諦めると、意外なモノが手に入るかもしれない。
本当に意外なモノで、後々役に立ったりする。
あたしはちょっとだけ学習した。


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