光の風 〈国王篇〉前編-7
「それが本当だとして、どうするつもりだ。」
サルスの問いは終わらない。
「倒す。その為に国を出る。」
「何故カルサじゃなきゃいけない?他にも御剣がいるだろう、何故国を出てお前が倒しに行かなければいけない?」
「他の御剣では駄目だ。オレじゃなきゃ、代わりは利かない。」
次第に二人の感情も高ぶっていく。落ち着いた口調が少しずつ力を持っていくのがわかる。声も段々と大きさを増してきた。
「どうして!?」
もどかしさから身体も動いてしまう。言葉の通り、サルスにはどうしてか分からなかった。
しかしカルサの表情は苦々しく歯切れは悪い。
「あいつはオレを狙っている。オレのいる所に必ずまた現れる筈だ。これ以上犠牲を出したくない。」
「何を今更。」
「今までとは訳が違う。」
カルサの言葉で一度会話が止まった。絶え間なく交わされる言葉が途切れ、一瞬、一秒ごとに冷静さを取り戻していった。
「あいつ一人でも国を1つ潰す事ぐらい簡単な事だ。守るものを抱えて倒せる自信など…オレにはない。」
カルサの表情が歪む。それだけで彼の思いが伝わってくるような気がした。
「一人で行っても同じじゃないのか?」
サルスの冷たい声が武器庫に響く。しかしカルサは動じなかった。
「仲間がいる。」
「その仲間に貴未が入っていると。」
「そうだ。」
瞬間的に目が合った。サルスの表情があまりに凍り付いたような冷たさで貴未は構えてしまう。今までこんな表情を見せたことがあったか、自分自身に問いかけてしまうほどにサルスらしくなかった。
というより、こんなサルスを見たことがないし想像も出来なかった。
「戦力が減った城の守りから更に戦力を奪っていく訳だな。本当に潰す気らしい。」
呆れ果てた。投げやりな声は場の雰囲気を変える。
「どう思われても仕方ない。」
ついにカルサも押しの発言が消えてしまった。
「そう、お前の選ぶ道はただの自己満足にすぎない。何を思い、考えたとしても受けとめる側からすれば綺麗事だ。」
吐き捨てるような言葉。怒りに促され言葉よりも先に身体が反応した。サルスに近寄ろうとする貴未の足を止めたのはカルサ右手だった。
ただ横に伸ばしただけ、それだけで十分貴未を引き止める力はあった。