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【純愛 恋愛小説】

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何かの香りや匂いってのは、特に記憶と強く直結するってどこかで聞いたことがある。



私の彼はお香が趣味のアパレル販売員で、彼の家は常に甘い匂いで満ちている。

単にお香といっても彼いわくとても多くのメーカーや香りがあるらしく、彼にはとてもこだわりがある。

例えば。



朝起きたら“CANNABIS”、逆に寝る時は“MOON”、食後には“MIST”、のんびりくつろぎたい時は“CHANDAN”、それ以外では“SANDAL”…といった感じ。

それも必ずスティックタイプで、インド産の物のみ。



一日に色んなお香を焚いて匂いが混ざらないかと聞いたことがあるが、



「でもその時々の気分で使い分けたいし、このタイミングならこれ、ってもう習慣だからね」



って言っていた。



彼と付き合って1年以上経つが、これだけは欠かさず毎日、生活サイクルの中に組み込まれているようだ。

お陰で私自身も彼の部屋で二人で嗅ぐ香りがとても好きになっていた。



しかし一週間前。



「またそれ!?もういい加減にしてよ!前から約束してたじゃない!」

「だけど仕事入ったからさ…。慧(けい)にはほんと悪いと思ってるよ。な?ごめんね?また次の休みに行こうよ」

「でも義斗(よしと)はいっつもそれじゃん!もういいよ!」



その後、義斗の制止を振り切り、義斗の部屋を飛び出した。



義斗が仕事で忙しいのは私も分かってはいるけど…でもやっぱりデートはしたいし、休みは二人で一緒にいたいよ。
販売員の義斗とは休みだって中々合わないのに。

なのに…。



あれから、私の携帯には義斗からの不在着信やメールで一杯。
積もり積もって未だに腹が立ってるから、電話も出ないしメールも無視してるんだけど。



メールの内容は謝罪の文面だけど、今回ばかりは無理…。
もう別れようかな…。


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