エリザベスドール2-6
真夜中…
ベッドに歩み寄ったエリザベスはルークの寝顔をソッと見入ったりしていた。
朝…
ルークが登校する時なんか、窓のカーテン越しから見送っていた。
人形が動いているなんて、ルークは全く気付いていない。
或る日…、
ルークは学校の校長室に呼ばれた。
校長室には校長先生や担任の先生の他に…
立派な身なりをした上品な老紳士がいた。
老紳士は丁寧な挨拶を済ませると、ルークに話しかけ始める。
「君がルーク・ハリー君だね?」
「そうですが…、貴方は?」
校長先生が説明する。
「こちらはバーソロン財閥の会長アースル・バーソロン様で、この学校にも多大な寄付や援助をされている御方よ」
「ああ! どうも、初めまして!」
アースルと握手するルーク…
大変なゲストの前に思わず、緊張してしまう。
バーソロン財閥と言えば鉄鋼や造船、電機や運輸などを手がけ…
フィリップグループと共に、イーリス国の産業を支えている大企業体。
その巨大組織のトップが何故、こんな所へ来たのだろうか?
校長先生が理由を説明する。
「今日は、あなたに会う為に見えられたのよ」
「僕に何か?」
「君はこの前、ライン通りのA骨董屋で人形を買っただろう? エリザベスと言う名前の人形だ」
「ええ、買いました。
でもどうして、それを?」
「実は私は、その人形をずっと探していたんだ」
「探していた?」
アースルは1枚の用紙を見せた。
人形エリザベスの所有者である事の公的証明書である。
「あの人形は随分前に亡くなった我が娘の形見として大事にしていた。
ところが5年前に家屋敷が火災に遭った際、何者かに盗まれてしまった。私はあらゆる手を尽くして探したが見つからなかった。しかし最近になって、人形は色んな経緯を得てA骨董屋に売られていた事が分かった。
勿論、君が人形を買った事もね」
「そうですか。人形を…返して欲しいって事ですね…?」
「物分かりが、早いじゃないか君は」
期待を寄せるアースルだけど…
ルークの方は思いがけない状況に戸惑うばかりである。