想-white&black-H-6
「麻斗さん、どうして私の携帯分かったんですか?」
『甘いなあ、花音。俺を誰だと思ってんの。これでもいろいろツテがあんのよ』
つまりは何らかの方法で調べた、という訳だ。
確かに麻斗さんなら携帯の番号くらい簡単に突き止めるだろう。
「あの、それで今日はどうかしたんですか? わざわざ電話してくるなんて」
『迷惑だった?』
「いえ、そんなことはありませんけど……」
『こうして俺と話してるってことは、楓はそこにいないんだな』
「え、ええ。楓さんは今……」
そうだ。
楓さんは今婚約者候補の女性と一緒にいる。
麻斗さんから突然の電話で驚いて忘れかけていたが、そのことを思い出してまた心が沈んだ。
『花音? 楓がどうかした?』
いきなり黙り込んでしまった私に麻斗さんが優しく話しかけてくる。
つい甘えてしまいたくなるような声に心が少し揺れた。
「あ、いえ……。楓さんは今お客様が来てるのでそっちに……」
『花菱のお嬢だろ』
「えっ? どうしてそのこと……」
『楓の行動はだいたい耳に入ってくるからね』
「? どういう意味ですか?」
『内緒ー』
そう言って麻斗さんははぐらかしたため、私はそれ以上聞くことができなかった。
二人は幼い頃からの繋がりがあることは知っていたが、そこに部外者の私が踏み込んではいけない気がしたからだ。
『それで花音は落ち込んでるわけだ』
「べ、別に落ち込んでなんて」
鋭い指摘に反論したがあまり効果はなかったようだ。
『嘘つくなよ。俺には分かる。花音が今どんな気持ちで、どんな顔をしてるかくらい』
「麻斗さん……」
耳に優しく響く声が何だか嬉しく感じた。
それが慰めの言葉だったとしても、私を分かってくれようとした人がいたということが嬉しかった。
『なあ、花音』
「はい」
切なげな声で名前を呼ばれ、思わずどきりと心臓が跳ねる。