心霊ファイル…怨み・最終回-1
私は吉岡杏里。
騒動が終わって幾日か過ぎた。
私は今、自宅のパソコンで友人・椎葉彩愛の個人サイトをチェックしている。
今回の心霊騒動に関するレポートが、サイトの心霊ファイルに掲載されたばかりなのだ。
霊現象の被害に見舞われた当事者の氏名や住所は勿論、完全に伏せられているけど…
騒動の内容や経緯が詳しく、完璧にまとめられて記載されていた。
彩愛の文章作成の上手さには、定評がある。
だから…
彩愛のサイトって、いつも高いアクセス数を誇っているのだ。
30分も前に更新されたばかりなのに…
もう、相当な数のアクセスが来ちゃってるし。
この報告だけど…
>霊は成仏して、騒動も 無事に終わった。<
…って締めくくられている。
まあ確かに家庭内の雰囲気が明るくなった柳沢家を見れば…
騒動は終わってるかのように、見えるかもしれない。
しかし…
「騒動はまだ、終わってはいないんだけどネェ」
一緒に観ている姉の友里恵が否定する。
私は反論もしないし、文句も言わない。
本当に姉の言う通りなのだから。
「戸村弦太郎は一族の何なの?」
「彼は一族の下っ端に過ぎないわ。一族の頭の命令で、仁美さんに憑依していたのね」
「じゃあ、一族の中心人物たちは今どこに?」
「深い闇の世界に身を潜めているかしら?
私たちでも見つけられない場所にね」
「戸村弦太郎が成仏したとなれば、当然…」
私の言葉を借りるように姉は言う。
「機会があれば又…
柳沢さんの家族に障やるかもしれないわね。
今度は恐らく、集団でかかって来るかもよ」
やはり…
戸村一族の怨みは完全には消えていないのだった。
約300年以上も前の怨念が今も続いているのだ。
ちょっとやちょっとで解消されるような生易しいものでない事は…
姉も私も、しみじみ感じている。
悪いけど…
実は彩愛には、本当この事は一切話していなかった。