黒魔術師の恋愛事情〜発覚-1
ここは黒須家にある真彦の自室。
「あぁ〜!どうしよ〜!」
真彦は自分のベッドに横たわったまま、頭を抱えていた。
先日、校内三大美人のうちの一人、高坂麻里に告白され、緊張のあまり付き合うことを了承してしまった真彦。その真彦の自室には数多くの黒魔術道具が置いてあるのだ。
「まさかこれを見せるわけにはいかないよなぁ〜…」
真彦は部屋を見回しながら呟いた。
何故真彦が悩んでいるか。それは今日の学校の昼休みへと遡る。
「ねぇ黒須君」
麻里はクラスの違う真彦の処へ頻繁に訪れていた。
「高坂さん、どうかしたの?」
「今度の休みに黒須君の家に遊びに行ってもいいかな?」
「っ?!」
真彦は声にならない叫びを発した。
「お、俺ん家に来んのか?」
「ダメかな?」
寂しそうな眼で真彦を見つめる麻里。
「えっ!いや、ダメじゃないんだけど…」
「本当?!じゃあ、今度の日曜に行くね」
「今度の日曜…って明後日じゃん!」
「もしかしてその日…空いてないの?」
またもや寂しそうな眼を向ける麻里。その眼に真彦は何故か弱かった。
「う…空いてるよ。何の予定もないし」
観念したように真彦は呟いた。
「良かった〜。じゃあ明後日、校門で待ち合わせしようね!」
「わかった…」
自分のクラスに戻っていく麻里を見て、真彦は自分にため息をついた。
その日の放課後、真彦は麻里と共に帰っている。二人が付き合いだしてからは、真彦が麻里を自宅まで送るということが常となっている。
「じゃあ、明後日の十時に校門で待ち合わせしようね」
麻里は嬉しそうにはしゃいでいる。
「なぁ、高坂さん」
「なぁに?真彦君」
付き合いだしてからの麻里は真彦のことを『真彦君』と呼ぶようになった。学校では『黒須君』と呼んでいるのだが、これは真彦が麻里に頼んでこう呼ばせているのである。学校で真彦君などと呼ばれた時にゃ、嫌でも目立ってしまうからだ。
「そのさ、何で急に俺ん家に来たいと思ったの?」
「だって…真彦君は私の家知ってるけど、真彦君の家は私知らないんだもん。好きな人の家くらい知っておきたいよ…」
恥ずかしそうに言う麻里を見て、真彦まで恥ずかしくてなってきた。
「そ、そうか。そうだよね。んじゃあ明後日の十時ね」
「…うん!」
その時、二人は恥ずかしがってはいるけど、お互い自然に笑えていた。
麻里を家まで送り届け、真彦は自宅へ帰る。そして自室の部屋のドアを開けた時、はっと気付いてしまった。
「こんなの見せらんねぇよな…」
部屋いっぱいの黒魔術の道具達。こんな光景を見せたら、麻里に自分の本性を見られてしまう。下手したら嫌われるだろう。
「あぁ〜!どうしよ〜!」
それが今の状況である。
「よし、こうなったら光輝に相談しよう!」
真彦は携帯を手に取り、自分の秘密を知っている友人に電話を掛けた。
『もしもし?真彦か』
数コールで友人の藍羽光輝が電話に出た。
「光輝、ちょっと相談があんだけど…」
真彦はそれまでの経緯と今の状況を簡単に説明した。
『ったく…見せたって口止めすりゃあいいだろ?どうせ嫌われるくらいだし』
「それができれば苦労はしねぇよ!何つうか…嫌われたくねぇんだ。わかんねぇけど、知られたら嫌われそうだけど…そうなるのが嫌なんだ…」
真彦は自分の気持ちがいまいち分からなくて困惑していた。