僕とフニの成長記5-3
『ベロベロベロベロ』
絶対に目ぇ開けない。
『ベロベロベロベロ』
むしろ今寝ちゃおう。
『ベロベロベロベロ』
気にしなけりゃ全然寝れるじゃないか。うん。
お昼寝しよっと。
僕の思考はどんどんフェードアウトしてゆきます。どんどんどんどんしていって、完全に無くなりそうな時、フニのベロベロがおさまりました。
フニに、勝った…!
玄関のドアの閉まる音が遠くで聞こえました。ぼんやりと頭が回転し始めます。
頭と体がリンクしていないのか、何だか体が少し重たい。
薄く目を開けると、買い物袋を持ったお母さんが入ってくるところでした。
あぁ、もう夕方なのか。
「あ〜っ!扇風機の風、直で当てたまま寝てたの?」
「…ん」
寝起き特有の掠れた自分の声。爆睡してたんですね。
「寒くなかった!?外すっごい涼しいんだよ?」
「…え?そなの?全然寒くなかったけど」
するとお母さんはクスクスと笑いながら
「ま、そりゃそうか。それなら二人とも寒くないよね」
と言いました。
「うん?」
二人とも?
そういえば、僕はもう目が覚めているのに体はずっしりとしていました。最初は僕の体が重いのかと思っていたのですが、どうやら違うようです。
「お、フニ」
僕のお腹の上でフニが丸まっていました。顔だけ上げて
『おかーさんおかえり?』
と寝惚け眼で欠伸をしました。フニの方はまだ、半分夢の中みたいです。
『あ、おはよー?』
僕はフニを抱っこしながら起き上がり、あぐらを掻いた膝に乗せました。
またフニはふあぁぁっと欠伸をします。
確かに部屋の中は涼しくなっていて、扇風機なんて要らないほどでした。むしろ風に当たっていたら寒いんじゃないかってくらい。
それでも僕のお腹はポカポカとあったかでした。