SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 A-8
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「待っている」と渋る雪乃をなんとかなだめて追い返すと、教室は急に静かになった。
しずはめちゃくちゃ不機嫌な顔でそっぽを向いている。
「しゃあないやん。たまたまそういう流れになってもうたんやから」
俺は気まずい沈黙をなんとかしようと、努めて陽気な声を出した。
「最っ低……」
しずは刺(とげ)を含んだ口調で、吐き捨てるように冷たく言い放った。
ぷいとそっぽをむいたまま、俺と目を合わそうともしない。
「いや……俺は一応『やめろ』言うたんやで?……ほんでもアイツがしつこく迫ってくんねんもん。しゃあないやろが」
俺は言い訳を並べてまた同じ言葉を繰り返した。
しずは相変わらずの膨れっ面や。
くっそ……なんやねん。しつこいな。
俺が誰と何しようと、別にどうでもええやろ?
それとも、俺が誰かといちゃついたら腹立つ理由でもあるっちゅうんか?
何故かはわからないが、必要以上にしずに絡みたい気分になっていた。
いや、本当は前からずっと、俺は確かめたいと思ってたんかもしれん。
しずと俺の間にある曖昧なモノの正体を――――。
「お前……それ…ヤキモチちゃうん?」
しずの瞳に微かな動揺が走った。
その動揺の意味が気になってしかたない。
目指す終点もわからないまま、俺は暴走する機関車に飛び乗ろうとしていた。
しずの切なく苦しげな表情が、俺を駆り立てる。
しず……お前……。
俺はどうしようもなく息苦しくなって、とうとうパンドラの箱に手をかけた。