SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 A-5
「雪乃。お前ひとの教室勝手に入って何やってんねん」
半ばうんざりしながら声をかけると、その女はウェーブのかかった茶色い髪をかきあげながらゆっくりと顔を上げた。
ファッション雑誌のモデルのメイクを忠実に再現したような完璧な美人。
しかしその華やかなお面のような顔に、俺はもう何の興味もなかった。
「なぁによ。別にいいじゃない。だあれも文句なんか言わなかったもん」
「そういう問題ちゃうやろ」
あきれている俺をよそに、雪乃はふわりと立ち上がると、俺に身体を擦り寄せて腕を絡ませてきた。
「ね――それより、今日彰吾の部屋行っていいでしょ?」
その顔には客に媚びるホステスみたいな安っぽい笑みが張り付いている。
――相変わらずずうずうしい女。
転校してきてすぐの頃、ごく短い期間だったが、俺はこの女と付き合っていたことがある。
結局、このわがままな性格に嫌気がさしてすぐに別れてしまったのだが、別れた後もこの女はこうして時々俺を誘いに来るのだ。
「――なんやねんな。お前こないだ『新しいオトコ出来た』言うてたんちゃうん?」
「んー。そうなんだけどぉ」
唇を尖らせ、拗ねたような顔で目を伏せる雪乃。
どういう顔をすれば男がいうことを聞いてくれるのか、この女は十分すぎるくらい知っているのだろう。
ホンマに欝陶しいけどしゃあないわ。
こいつが一度機嫌を損ねるとどれだけ厄介か、俺は身にしみてわかっている。
俺はベタベタまとわり付く雪乃の身体を仕方なしに抱きよせ、お駄賃程度に頭を撫でてやった。
「なんや?ケンカでもしたん?」
「実はさ……デートドタキャンされたの。だから寂しくって……」
雪乃は俺の腕に柔らかい胸を押し付けながら、上目使いにねっとりと視線を絡ませてきた。