手紙 〜side 恵〜-4
ふと、手に取ってみると、それには、
『白木 恵 様』
そう、最初に書いてあって。
なんでこんな所に、俺の名前?なんて、考えながら、さっと目を通す。
それは、手紙だった。
そこには、ミュウがもし死んでしまった時のことが書かれていて、ミュウから俺へ充てた、最後のラブレターのつもりらしい。
「…ほんと、ばかじゃねぇの…」
読み終わると同時に、溢れる言葉。
なんで、こんなもん書いてんだよ。
どんな顔をして、どんな思いで、これを書いたんだろう。
きっと、ミュウのことだ、その時のことを想像して、ポロポロ涙を零したに決まってる。
あいつは、素直で感動屋。
だから、映画に感化されやすかったりするし、涙だってよく流す。
俺にはない、とても純粋な部分。
それは眩しくて、暖かくて。
もし、自分が死んでしまったら。
その後のことを色々と、考えてしまったんだろう。
だから、もし、そんなことになったときの為に。
こんな手紙みたいなもん、こっそり書いたんだろう。
おまえ、全然病気じゃないじゃん。
もしもなんて、考えんなっつったろ。
つーか何、おまえ心配してんだよ。
俺の心配なんかしてんじゃねぇよ。
もしもでも、おまえが死ぬとか考えたくもない。
考えられないんだよ。
なんだか胸に熱いものがこみ上げてきて、なんとも言えない気持ちになった。
そっと、手紙を元の位置に戻してから、一呼吸。
「おい、ミュウ」
「…」
「おい!ミュウ!」
「んあ?もう食べられないよぅ…」
「なーに寝惚けたこといってんだよ」
「ふぇ?めぐさん?」
「…こら、いつの呼び方してんだよ」
「んああ、けーちゃん」
目を擦りながら、まだ眠たそうにしているミュウ。
けれど、だんだん覚醒してきたのか、慌てて置いてあった手紙を手帳に挟む。
―悪いな、ミュウ、もう読んじまったよ。
そう心の中で謝りつつ、それを見ないふり。