ハニードリッパー2-3
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私たちはどれほど離れていたのだろうか?
私の記憶では別の高校に通って卒業する頃にはケイジと過ごした記憶がない。
私は広告代理店を経て、ちょっとしたスーパーに転職して広告や企画の仕事をしている。
もちろん不満もあるけど自分では精一杯自由に生きてきたつもりだった。
男の事も結構自由にやってきた。
面倒になってきたら別れて寂しくなったら、また別の男と付き合う。
本当に一晩だけのつもりだったがケイジにどんどんのめり込んでいく…
なぜだろう?
気心知れた者同士だから?
違う…
私はケイジが羨ましいのだ。
今でも本当にあの頃と全く変わらずに夢だけを見て毎日生きている。
そんなケイジのそばにまたいられただけで幸せな気分になれた。
就職はしない。
この年になってもバイトを転々とする。
仕事を持つという事は負けたような気分になるのだろう。
ケイジは何も言ってないけれど、私にはそんな気がした。
ケイジには音楽がある。
他には何もいらないのだ。
そう思っていられるうちは良かったのだが、私はある日見知らぬ女が来た事に不安を覚えた。
しばらくすると私はケイジの中にすっかり関わっていて、互いのアパートを行き来して普通に抱き合って眠った。
バンドのメンバーたちやその彼女たち…
そう…
そもそもそんなケイジに彼女がいないわけがなかったのだ。
綿密には特定の相手がいないと言った方がわかりやすいだろう。
彼女はリタと呼ばれた。
見たところ外国人には見えないが、本当の名前にも私としては興味ない。