ネコ系女 #5-1
微睡みとかそういうのは一切無く、いきなりパッチリと目が覚めた。
【ネコ系女は寝起きもいい】
頭に重みを感じて、ゆっくり体を起こす。それに合わせてタマの頭がカクンと項垂れた。
どうやらタマも寝てしまったようだ。
いや、そんなことはどうでもいい。
海には金色の光が反射して空がオレンジ色になりかけていた。すごく嫌な感じ。
私は辺りを見渡して(この時、私の膝に乗っていたノエルがピョンとタマの方へ避難した)時間が確認出来るものを探したが、全く見当たらず、焦ってカバンからケータイを取り出した。
「………っ!」
間に…合わない…。
もう無理だ。
五分では顎髭のとこまで行けない。いや仮に行けたとしてもこんなカッコで会うことなんて出来ない。
こんな失敗したことなんてないのに…。
「タァ〜マァァァ〜!」
タマの肩を掴み、ありったけの力で前後に揺らした。
「…ふぁっ、むニャ!ぅおっおっおっ!」
「タマの、ブァカァ!何であんたまで寝てんの!?」
【ネコ系女は容赦なく八つ当たる】
「あっ、ウっ、おっ、おち、落ち、着い、て…」
肩を離してやると、タマはフルフルと頭を振った。脳ミソを定位置に戻したようだ。
「だって、俺寝ちゃえば起こさなくていいじゃん」
は?
「意味が全然分かんないんだけど」
「だからぁ、俺寝ちゃえば起こさなくていいじゃん!」
「さっきと一語一句変わってないじゃん!変わってんの勢いだけじゃん!結局意味分かんないままだし」
タマはノエルを抱っこして自分の顔をノエルで隠した。
タマの顔の前でノエルはプラ〜ンと垂れていて、不思議そうに瞬きをしていた。
そしてノエルのものらしき甲高い声でこう言った。
「起こしちゃったら朝希帰っちゃうじゃん」
…アテレコ?
「は?」
ていうか、聞いてもやっぱり意味が分からない。
私、物分かり悪い子じゃないのに。
「それは、あえて起こさなかった、ということかな?」
してやったりと笑ったタマが顔を出し、やっぱりノエルボイスで
「ピンポーン、正解正解!」
あぁ、そういえば姫代もノエルにアテレコをしていたことがあった。
ノエルも勝手に口の代用されて可哀想に。