ネコ系女 #5-8
「別に?特に何もないよ」
嘘ついてんじゃねーよ、髭が。
あの友達から私に連絡が来ているのだ。
一回ヤってそれから連絡がないって。連絡が無いのは私のせいであるけれど。
今日一日見定めさせてもらった結果、間違いない。こいつは私の体目的だ。
「アツシ君も飲めば?」
「いや、俺はこれあんじゃん?」
車のハンドルを持つ真似をする。そんな建前、建てるだけ無駄なのに。
「そっか、そうだよね」
ああ、もう笑っているのが面倒くさい。
何で私笑ってんの?
「でさこの後のことなんだけど、どうする?」
「うーん、どうしよっか」
どうもこうもしないし、お前とはヤラないよ。
「朝希ちゃん結構お酒飲んだけど大丈夫?」
「ちょっと酔っぱらっちゃったかも」
大丈夫に決まってんでしょ。ほぼシラフに近い状態なんですけど。
「どうする?どっかで休んでく?」
「え、うーん」
私はネコ。無理とか我慢とかは嫌いだ。
「近くにホテルあんだけどそこ、行くか」
今私が一番やりたいこと…。
「…行かねーよ」
【ネコ系女は思うがまま】
「ん?」
「…行かねーつってんの。もう無理してまで顎髭と一緒にいてらんないの。私は今からネコ探しに行くから、さようなら!」
私は自分に嘘はつかない。わがままだろうと気紛れだろうと自己中だろうと、やりたいようにやるのだ。
ももちゃんだって関係ない。
私自身のために。
私は、今すごくノエルを探しに行きたい。
【ネコ系女は自分にだけは素直】
タクシーを捕まえるのも面倒で、履いていたパンプスを脱ぎ裸足で走った。
ミニスカートであるのも気にせずしゃがんだり、草むらを掻き分けたりしてノエルの名前を呼んだ。
道行く人たちが私を見ていく。でも、私は見られることに慣れている。ただ、意味は違ってくるがこの際気にしていられない。