ネコ系女 #5-6
「おはよー!」
「おはよう」
「朝希ちゃんやっぱまじイイわー、可愛い」
「ふふ、ありがと」
お決まりの会話をして私は助手席に乗り込んだ。
美容師をしてるだけあって顎髭はやはり、おしゃれ男子だった。この間見た時よりも髪の色が黒くなっている。
今日は黒渕メガネをかけていて、インテリな雰囲気も似合うなと思った。そんでタマには似合わないだろうなとも思った。
タマがメガネをかけているところを想像すると、頑張って背伸びしている中学生みたいで吹き出してしまった。
「ん、何笑ってんの?」
「私ね、今日すっごい楽しみだったの。だから」
「へぇ、そう。俺も楽しみだったよ」
自分はつくづく咄嗟の嘘がうまいと思う。
もし自分が男だったらこんな女と付き合いたくない。
「どっか行きたいとこある?」
「んー…あ、私水着買ったの。それに合うアクセ欲しいなー。見に行っていい?」
「いーよ。んじゃ、シュッパーツ」
大規模なショッピングモールでブレスを買ってもらった。その隣のお店ではピアスとネックレスを。
さすがにサンダルは自分で買ったが、かなりのものを貢いでもらった。
顎髭はいいよいいよと言いながら、ポンポンお札を出していく。
その度にちょいちょいタマの言葉を思い出すのだ。
『ナァナァは良くないなって、うん』
だから何だって訳じゃないけど、ナァナァは悪くなくはないのかなとは思い始めた。
そんなことを考えていたらお昼ご飯の時に、割勘で計算して、自然と財布を開ける自分がいた。
「あ、いいよ。ここは俺が」
「あ、えっ!?うん、ごちそー様」
そんで顎髭から
「案外朝希ちゃんてイメージと違うのな」
と笑われてしまった。
私、タマ菌に犯されているかもしれない。
その後、適当にお喋りしながらドライブして(弟の話は上手い具合にかわした)ウィンドウショッピングでブラブラしてたら二、三着洋服を買ってもらった。
【ネコ系女は貢がれる】
夜はちょっとこ洒落た焼き鳥屋さんに連れていかれた。
「焼き鳥とか好き?」
「焼き鳥自体は好き。焼き鳥屋の雰囲気がちょっとね。匂いとか着いちゃうじゃん」
「あー確かに。でもさ、ここは結構綺麗だから朝希ちゃんでも大丈夫だと思う」
「へぇ、そうなんだ。楽しみ」
顎髭が私の一歩前を歩き、店のドアを開けてくれた。ありがとうとにっこり笑って中に入ろうとした時、私のケータイがカバンの中で鳴っているのに気が付いた。
「あ、ごめん。電話みたい。先に入ってて」
早く来てねと言って顎髭は店内に入っていく。
私はカバンを漁ってケータイを取り出し、電話の主を確認した。