ネコ系女 #5-3
「お、弟さん倒れた…の?体弱いって…?」
ベンチに座ったままのタマが心配そうに私を見上げていた。
「んな訳無いでしょ、嘘だよ嘘。嘘も方便なの」
弟には悪いが、私のドタキャンの理由のために犠牲になってもらう。
どうせ、弟は既に何度か倒れてもらってるし。
私にとって奴はそういう便利な存在なのだ。
【ネコ系女はどこまでも薄情】
「じゃあ、弟さんは無事なの?」
「無事なんじゃない?離れて暮らしてるから分からないけど。ノーテンキに生きてると思う」
「そうなんだ、良かった」
「それに私、実際倒れたとしても絶対遊び優先するし」
「とか何とか言っちゃってぇ。本当はぶっ飛んで行くくせにぃ」
「あんたに私の何がわかんの?」
私がそう言うとタマは立ち上がって私の頭を撫でた。
「俺には分かるよ〜。朝希は一番最初に駆け付ける、イイコイイコ」
意外と背が高いタマ。覗き込むようにして笑っている。福助みたい。
そうされているということに気付いた時、照れるというより「よくそんなことが出来るな」とこっちが恥ずかしくなった。
「そんなの絶対無い」
タマの手を退けながら思い切り白けた顔をして言ってやった。
「ある。ほんでちょっと感動した弟さんの胸ぐら掴んで『私の貴重な時間を奪った罪は軽くないから』って言う!うん」
私の物真似をするタマ。
タマといい姫代といい動物好きな人はアテレコとか真似とか好きなのかな、と思った。
でも、頭の中でそのシチュエーションを想像すると
「あ〜…私、言いそう」
「でしょでしょ!?」
本当に言いそうでなんだか笑えてきた。
笑いは移る。
タマがケラケラ笑っていたので私も声をあげて笑ってしまった。
顎髭の約束はドタキャンした。タマとノエルとも仲良くなった。今日はまだある。
となると…。
「今からどっか行く?」
不本意ながら私からタマを誘った。タマとなら、まぁ、これからの時間を過ごしてやってもいいと思う。