ネコ系女 #5-12
「…へ?はレ?」
タマはそのネコを抱き上げた。
「アビシニアンのももちゃんです。初めまして」
ももちゃん=ネコ。
開いた口が塞がらない。
ももちゃんから目が離せない。
私は今までとんでもない勘違いをしていたらしい…。
【ネコ系女は早とちり】
ももちゃんとタマを交互に見つめる。
そして
「何だぁー…!」
へなへなとその場に座り込んだ。
体の中から色んなものがフヨフヨ抜けていって、そう言えば私走ってたんだとか、アルコール入ってんだとか思うと、一気に疲れてしまった。
「どした?大丈夫?」
タマが駆け寄って私の前にしゃがみこむ。
「大丈夫、何か疲れちゃって…。私、ももちゃんてタマの彼女なのかと思ってた」
ハハと軽く笑う私を見て、タマはポンと手を叩いた。
「だからか!」
タマはクスクス笑いながら
「これで俺が怒られた理由が分かったよぉ!今まで何でだろなぁって思ってたから。あぁ〜スッキリ!」
と言った後、アハハと笑い始めた。
結局、タマは何もしていないのに私に怒鳴られ、殴られ、散々なので少し申し訳ないなと思う。
「タマ、ごめんね」
口の中でモゴモゴ。
果たして声をあげて笑っているタマに聞こえているかは分からない。
「ん、いーよ。ぜーんぜん気にしてないから」
どうやら聞こえていたらしく、タマは私の頭に手を伸ばし自分の胸に押し付けた。
そのままふわっと抱きすくめられる。
タマの香りにタマの体温、それらを感じてタマの腕の中はひどく安心できた。
「俺同時進行とか無理だし、彼女いたら朝希のこと好きにならないでしょ」
私は少し顔を上げて、タマを見る。タマは優しく微笑んでいた。
「やっぱタマはそういうの出来ないタイプだったんだ」
「うん、そう。…あ、でも」
タマの顔がイタズラする子猫のようになった。その顔はいつもの優しいヘラヘラした顔とは全然違くて、ドクッと心臓が跳ね上がり、ホントのタマの一部分を見つけた気がした。
何だかその顔にすごく惹き付けられる。同時にたまらなく愛しいとさえ思った。
「彼女がいたとしても、相手が朝希だったら好きになるかも」
また私は思った。この間も感じたこと。
案外この男は安全ではないのかもしれない。