ネコ系女 #5-10
「じゃーん。タマ特製冷やしカフェオレ〜。どうぞ」
私の目の前にカフェオレがことりと置かれ、向かい側にタマが座った。
「どうも。…あのさ」
胡座をかいて牛乳を飲むタマ。
「ん?」
飲みながら瞳だけ私に向けた。
「どうして怒んないの?」
「何で?」
まさかの質問返しをされた。
「ほら…私、殴ったしボロクソ言ったし、本当ならどの面下げてくりゃいいのか分かんないぐらいのことしてるじゃん」
自分で思い返して、今すぐここを出て行きたいという気持ちが強まった。
だけどタマは、それでも不思議そうに私を見つめたままだ。
「うん、だから何で?何でそんなんでキレんの?」
「だって普通なら…」
「でもその分朝希も辛かったんでしょ?もし朝希が意味も無く、ただボロボロにするためにしてたなら怒るよ。そんなつまんねーこと辞めなって言うよ」
カランとカフェオレの氷が鳴った。
「朝希は怒鳴ったり殴ったりした後、何も感じなかった?考えなかった?…違うよね」
「…どうして分かんの」
「そりゃ分かるよ」
いつかもそうしたみたいに、タマは私の頭を包み込むように撫でた。
「だってすっごい悲しい顔してんだもん。だから朝希はちゃんと分かってるんだよね?それなら怒る意味無いじゃん」
【ネコ系女は実は繊細】
カランカランとまた氷が溶けたようだ。
「これ飲んでいい?」
「あ、うん!飲んで飲んで」
パッとタマが私から離れた。
特製カフェオレは氷が溶けて味が薄くなり、とてもじゃないけど美味しいとは言えない。出来立てだったらきっと美味しかっただろうと思う。
「どう?」
ニコニコとタマが私を見ている。