「美人教師がボクのママに?」-5
Rはとかく評判のよくない教師で、よく女子生徒を生徒指導室に連れ込んで、セクハラをしているという噂が絶えなかった。
生徒指導室はRが管理管轄する部屋で、この部屋に入って中から鍵をかけてしまえば、そこで何が行われているのか外からは窺い知れないのだ。
浩介が尾行しているとも知らずに、案の定、Rは昌子先生をともなって、
生徒指導室に入っていった。
おそらく、昌子先生が担任するクラスの悪ガキの素行のことで難癖でもつけて、先生を生徒指導室に連れ込んでセクハラ行為に及ぼうという魂胆だろうと浩介は睨んでいた。
彼はふたりが消えた生徒指導室のドアに耳をつけて、室内の様子を窺った。
しかし、ふたりの先生は声を潜めながら話しているようで、ボソボソした声が聞こえるばかりで、話の内容までは分からない。
そのうちに、ふたりで争うような物音が聞こえてきた。
「そんなの言いがかりです」
「そんなことをしたら、セクハラで訴えますよ」
「やめて……やめてください」
室内からそんな昌子先生の、いや、浩介の母親の荒げた声が聞こえてきたのだ。
母親が襲われている。
何とかして母親を助け出さないと。
浩介はドアノブを握って動かそうとしたが、
中から施錠されていて動かない。
それで彼はドアを平手でバンバンと叩く作戦に出た。
バンバン、バンバン。バンバン、バンバン……。
浩介は必死でドアを叩きつづけた。
こんなことをされたら、部屋の中ではセクハラどころではなくなるはずだ。
やがて、
内側で鍵を外す音がして、
ドアが開けられた。
開けたのは昌子先生で、
スーツの上着とブラウスの前がはだけられ、
先生はそれを手で掻き合わせるようにしていた。
浩介は室内に入り込むと、
昌子先生をかばうようにして、
その前に立ってRと対峙した。
「いや、何でもない。
言葉のいきちがいがあっただけだ……
何でもない」
生徒指導担当教師のRは、しどろもどろに言いながら、泡を食って部屋から出て行くのだった。
「ありがとう。
おかげで助かったわ」
昌子先生に頭を下げられ、浩介は面映いものを感じていた。