Lesson xxx UC-1
何で!?
何で南方先生と一緒なの!?
私に帰れって、急用が出来たからって言って南方先生を連れてくるなんて…。
わかんないよ…先生…。
南方先生の榊先生に縋るような表情が目に焼きついて消えない。
それに先生を『征也』って呼んでた。
あの二人って知り合い?
南方先生は今日初めてうちの学校に来たはず。
それなのに名前を呼ぶなんて…以前からの知り合いなんだろうか。
でも普通の知り合いだったら名前なんて呼ばないよね…?
ああ…。
もうわかんないよ…。
先生を打った手のひらがジンジンして、さっきの光景が嘘じゃなかった事を嫌でも思い出させる。
先生は追いかけてきてもくれない。
私より南方先生の方が大事なの…?
雨でよかった。
泣いててもわかんないもん。
こんな時にどうでもいい事を考えてる自分が可笑しくもあった。
「濡れて帰ってくるから!」
お母さんの呆れた声が頭に響く。
「もう…。こんな時ぐらい静かに寝かせてよ…」
雨に打たれたのと多分精神的ショックで熱が出た。
ちょうどいいや。
今日はどっちの先生の顔も見たくない。
「お母さん、今日は用事で出かけるけど…。大丈夫?」
心配げなお母さんに笑顔を作る。
「寝てれば平気。子供じゃないんだから大丈夫だって」
「濡れて熱出すなんて十分子供です」
全くもう、って感じのお母さんに舌を出して布団を引き上げる。
「じゃあ行ってくるから何かあったら電話して」
「うん」
ようやく出て行ったお母さんにホッとため息をつく。
そういえば前に熱を出した時は先生が看病してくれたんだっけ…。
ああ、もうっ!
先生の事なんて今は思い出したくないのに。
それなのに次々に浮かんでくる先生と過ごした時間に涙が零れる。
こんなの全然私らしくない。
男を想って泣くなんて私じゃない。
頭でわかってるけど心が痛む。
昨日もさんざん泣いたのにまだ涙って出るんだ…。