憂と聖と過去と未来 7-4
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「あら憂ちゃん!久しぶりね!」
「おばさん久しぶり!」
聖のお母さんに会ったのも久しぶりだ。
それだけじゃない。聖の家も訪れるのは数年ぶりになる。
胸の高鳴りを抑えられない。
「いいから、部屋行こうぜ」
「あ…うん」
「憂ちゃん、晩御飯食べていってね」
「ありがと、おばさん」
それだけ言って、聖の部屋に入る。
「……」
聖の部屋も高校の頃と何一つ変わっていなかった。
聖が普段纏っている空気を胸一杯に吸いこむ。
あたし、やっぱり聖が好きなんだ…
「なにつっ立ってんだ、座れよ」
「あ…」
聖はもう座って麦茶をグラスに注いでいた。
慌てて座ると、聖がグラスを差し出してくる。
「ありがと…」
「お前、なに緊張してんだ」
「へ?」
確かにおかしなくらい緊張している自分がいる。
何を話せばいいんだろう。
聖は優しく迎えてくれたけど…関係が修復されようとしているのはわかってるけど…
やっぱりあたしは進めない。
うじうじしたってだめなのはわかってる。
あたしだって行動しなきゃいけないのもわかってる。
「お前さ」
「……え」
しばらく黙っていた聖が口を開いた。
「なにを考えてる?」
「なにって…」
「いい加減素直になれよ!」
聖の声が室内に響いた。
聖が会話で大きな声を出すのなんて初めてかもしれない。
あたしはひどくびくついてしまった。
それを見て、聖は小さく溜め息を吐いた。
「なあ憂、俺はもう昔のことなんかこれっぽっちも気にしていない」
「……」
「俺は昔のままだし、今だって変わらない。あんなことはあったけど俺の気持ちはあの夜と何一つ変わっちゃいない」
「……聖」
「わかってくれよ憂!」
「……」
聖をずるいと思った。
普段気持ちを言葉に表さない聖がこんなにストレートに言葉をぶつけてくれるなんて。
嫌でも胸に響くじゃない。