憂と聖と過去と未来 7-3
***
なんだかよく聖を見つける。
キャンパスで…
食堂で…
駅で…
今まで意識していなかったのか、それとも聖があたしとの距離を縮めようとしてくれているのか…
わからないけど、なんだかうれしくなった。
あたしも聖に近付きたい…
***
「ひ…っ…」
だめだ…
帰り道、前を歩く聖に声をかけようと試みたが、声が出ない。
あたしは結局…だめなままだ。
マンションの前。
聖が刺された場所。
聖は立ち止まることなくマンションの中に入って行く。
しかしあたしは聖が倒れていた場所で立ち止まってしまう。
「…」
この差はなんなんだろう。
一呼吸置いてマンションの中に入り、エレベーターへと向かった。
「おせえよ」
「わっ!」
聖がエレベーターで待ってくれていた。
「…気付いてたんだ」
「ああ」
エレベーターに乗り込む。
聖はボタンを押した後、じっとあたしを見ていた。
「憂、家よっていけよ」
そして突然、そんなことを言い出す。
「…え?」
「たまにはいいじゃないか」
「……」
その言葉、仕草は、あの頃と何一つ変わっていなかった。
聖…
わかった。
やっぱり聖は取り戻そうとしてくれているんだ。
一度壊れたあたしたちの絆を。