憂と聖と過去と未来 7-2
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「うそ!例の彼に!?」
「うん、今日突然」
「よかったじゃん憂!仲直りできて!」
「…」
「え、まさか…?」
「そう、そのまさか」
「冗談でしょ」
「ほんと。結局、終始無言で今に至る」
「ばかでしょ」
「ばかです」
食堂で友人とそんなやりとりを交わした。
あたし、本当にだめだ。
聖を前にすると、体が竦んで何もしゃべれなくなる。
あの血まみれの聖と、その後のきつい目があたしを黙らせる。
聖はもう、吹っ切れてるみたいだ。
なぜ吹っ切れるのかはわからない。
辛い思いをしたのも、酷い怪我をしたのも、みんな聖なのに。
それも自分のためじゃない。
全部あたしのために。
だからあたしは…苦しい。
あたしなりに頑張って手に入れたこの大学という世界も、今では息苦しい。
いっそ、大学は辞めてもう一度看護の道を目指そうかと考えたことも、一度や二度じゃない。
でも考えれば、看護士になろうと思ったのだって聖が理由だった。
小さい頃遊んだお医者さんごっこが楽しくて。
毎日あたしが看護士の役をやっていたら、聖が言ったんだよね。
“憂ちゃんは看護婦さんになりなよ”
あの言葉だけで、ずっとその仕事を目指していたんだ。
だからやっぱりあたしに戻る道はない。
頭の中から聖を消すことなんて無理だった。