距離〜美沙と賢〜-1
入学して半年程経ち、クラス内でも仲の良いグループが確立されてきた。
そんな秋も中頃の、とあるグループ内の会話。
「なー美沙っち、この前紹介した賢ってやつと、どうよー?」
「まだ何回かメールとか電話したくらいだから何とも言えないのだー。会ったのもこの前の一回だけだしー」
「そんなー。せっかく美沙っちの要望に応えてさー、俺と順でセットしたのによー。なぁ?」
「そうだよ美沙ちゃん。賢はかなり美沙ちゃんのリクエストに沿ってると思うんだけど」
美沙が「彼氏つくりてーから紹介してくれー」と言ったのを発端に、剛や順平らがセッティングしてつい最近軽い合コン的なモノが開催されたのだ。
「むー。でも無愛想過ぎるのだー」
「だって“チャラくない硬派な男”で“ちょっと強引な感じ”って話だったじゃーん。それってまさにあいつよー。賢にだってお付き合いの可能性も含めた上で紹介したんだぞー」
「でも硬派と無愛想は違うぞー」
「まぁ確かに。あいつ結構口悪いし、ツンケンしてるからな」
「でも顔はカッコイイからさー、いいじゃーん」
「私は顔より内面重視なのだっ」
「難しいな、美沙ちゃん…。てかそもそもさ、なんで彼氏候補をわざわざ他校から選ぶわけ?」
「だってもし彼氏が同じ学校だったらさー、女の子と話してるのとか沢山見ちゃうじゃんよー。そういうのイヤー」
「美沙っちって、妬きっぽいのかー?」
「おぅよ。こう見えてもなー」
「へー…意外だな。だから他校で、しかも硬派が良いと」
「そうなのだよー」
「強引ってのはどういうこと?」
「私なよなよしてる男嫌いだからさー、それよりも“俺について来い”ってな具合の方が調子いいのー」
「美沙っち…Mなのかー…?」
「否めないなー」
「またまた意外だぞー…」
「でも校内でそういうやつ見付ければ良いんじゃないの?」
「そもそもうちのクラスの良い男共は彼女とか良い感じの相棒いるしよー、他のクラスの男共はパッとしないしよー、壊滅的だからさー」
「成る程ね…」
その日の晩。
美沙と賢は電話をしていた。