……タイッ!? 第三話「診察しタイッ!?」-7
「あん、はやーい」
おなかに回された手と膨らみの少ない胸を背中に感じながら、紀夫は来た道を引き返していた。
**――**
例の公園には先客がいた。今はまだ談笑している程度だが、あと三十分もしないうちに日が沈む。その後はわからない。
「あーあ、人いるし……」
「人いるって、公園だしねえ」
石段に座りながらペットボトルのジュースを煽る二人。
「せっかくノリチンと……」
肩にもたれる格好の理恵は人差し指で紀夫の頬をぐりぐりしだす。
「もう、理恵さんてば……」
「だって、テスト中とかノリチン冷たいんだもん」
「冷たいって、ちゃんと勉強教えてあげたでしょ?」
テスト前の二週間、放課後は常に三人でお勉強会。当然、保健体育の勉強を進める暇もなく、理恵にはやや退屈な日々だった。
「ね、理恵足が痛いの……」
「え、ホントに捻ってたの?」
「うん。バーに引っかかってね、靴下脱いだら痣になってた」
理恵は赤い紐靴を脱ぎ、暑そうな靴下を捲り始める。
無駄な毛の一本も無い彼女の右足は健康的に日焼けをしていたが、薄っすら見える痣が痛々しかった。
「ホントだ。保健室に行ったほうが良かったね」
「コレぐらい残らないよ。でも、ジンジンしてくる」
「どうすればいいかな? 冷やす?」
温くなったペットボトルを当てたところで患部がぬれるだけ。特に腫れが引くわけでもない。
「いたいのいたいのとんでけ〜ってしてよ」
「やだよ……」
「え〜、マネージャーなのにしてくれないの?」
「マネージャでもしないです」
「じゃあ理恵のここ、痛いまんまだ。きっとこの痣ずっとのこっちゃうんだろうなあ。エッチするときとか男の子に哂われちゃってさ、あーあ理恵ってば不幸……」
腕で顔を隠してバレバレの泣きまねをする理恵に、紀夫はどう対処したものかと頭を捻る。
「じゃあ俺はどうしてあげればいいのさ?」
「んとねえ、足にキスするの……そしたら許してあげる」
いつの間にか治療から贖罪に変わっていたが、ダダをこねる理恵に敵うはずもなく、またスカートから見える美味しそうな太腿を見てしまったからには、理性のブレーキもオイルが抜けてしまう。