……タイッ!? 第三話「診察しタイッ!?」-20
「え? うえ? あ、おい、なんだよ、急に!」
戸惑う彼女を抱く格好になる紀夫に、綾は困惑の度合いを深める。
「俺って臭いかな? 臭うかな?」
「ん、うん……汗臭い」
「いや?」
「ああ。当然だろ」
「まあそうだよね……でも、日吉さんだって匂いする」
「そ? そうか……。やっぱりいや……だよな。変な匂いするよな」
「汗の匂いかな。少し酸っぱくて、でもどっか甘い感じのする匂い」
わざとらしく音を立てて息をする紀夫に綾は反発しようと抱擁の中で腕をばたつかせる。
「ん、それってどういうことだよ……」
しかし、何故か力が入らず、仕方無しに抱かれるままでいる。
「多分綾さん、女っぽくなったんじゃないかな……」
数週間前に理恵から感じたモノを綾からも嗅ぎ取れる。きっと綾も……。
「女っぽく……か」
――当然か。日吉さんは彼氏いたみたいだし。
「なあ、あのさ、お前、童貞じゃないだろ?」
「え? あ、うん。まあ、その……うん」
不意の反撃に面食らう紀夫は彼女のほうを向くとき、抱擁をといてしまう。その隙を見逃さず綾は彼から歯なれ、そのままベッドの隅へいき壁にもたれて体育座りをする。
「里美? 理恵?」
短パンの隙間からはピンクの布と黒いフリルのようなヒラヒラが見える。
「えっと、それは……」
意外と派手なショーツを穿いているのだと驚きつつ、視線にきづかれまいと盗み見る。
「まあいいや。あのさ、初めてのとき……どうだった? っていうか、エッチするときってどうなんだ?」
理恵との初体験を思い出す。リードされながら互いを高めつつ、その欲情に駆られ……。
「ん、それは……夢中になって覚えてない……かも」
「なんだよ。だらしねーな……」
「ゴメン。でも、すごく、暖かかったし、理恵さん柔らかかった」
「お尻?」
「うん」
「そうか……そうだろうな……」
綾は短パンの裾を引っ張り、せっかくの隙間を隠してしまう。