……タイッ!? 第三話「診察しタイッ!?」-17
「日吉さん、ロッカーにも鍵かけてるし、タオルだって自分で洗濯してるし、なんかこう、距離を感じるんだよ。そういうのって駄目かな?」
「いいだろ、別に。お前の知ったことじゃないよ」
「知ったことって、俺はマネージャーだし、それに……、こういうこと言うのはあれだけど、感じ悪いよ?」
「……」
ストレートな物言いが相手を傷つけることは知っている。けれど綾の現状を表す言葉は他に見当たらない。場合によってはドロを被るもまたマネージャーの仕事と割り切り、敢えて苦言を呈す。
「わりいかよ、馬鹿やろう……」
ただ、本人も自覚があるらしく、言い返す言葉に覇気が無い。
「何か悩みがあるなら話してくれないかな? 俺に話しにくいなら里美さんでも理恵さんでも……」
「いや、まあ、その……うん」
体力の衰えが心の脆弱を誘い、それが結果的に彼女の態度を軟化させたかに見える。
「一人で抱え込んでもいいことないしさ、日吉さんは部のエースなんだし」
優しさを見せたりプライドを擽ってみたりと大忙しの紀夫に、綾は膝を抱きながら二、三度頷く。
「あのさ、一般論だぞ? 一般論でさ……」
――これはいけるかも?
「うんうん。なんでも聞いて……」
「おーい、日吉いたか〜?」
これからというときに裕子の元気な声が飛び込んでくる。
「先生ちょっと病院行ってくるけど、もう少し休んでから……」
カーテンがガラリと開けられると、裕子の顔は一瞬驚いたかと思うと見る見るうちににやついていく。
「ふ〜ん、そ。そだったの……悪いな……邪魔して」
しまりなくにやつく笑顔の裕子は二人を交互に見てからデスクへと戻る。
「は? なんですか先生、言いかけてやめないで下さいよ。きもちわるい」
裕子は綾の慌てた声を背中に受けながら鞄となにか書類のようなものを持ち出す。
「いや、なんだ。まあ、ここは学校だし? あんまりそういうことされると困るけどさ、お前らぐらいの年なら仕方ないよな……」
「あの、先生誤解してるってば!」
ようやく裕子のにやつきの真意に気付いた紀夫も弁明をするが、急ぎの彼女はそれに構う暇もなく部屋を後にする。
そして一言……。