距離〜順平と杏〜-1
まだ剛たちが一年生だった頃。
そして同時に剛や順平らが4人でダンスサークルを創設した時期。
「あ…順平くん…」
「あ、函南(かんなみ)先輩っ。おはようございやーすっ」
「おはよう…」
函南は順平らの一つ上の二年生。
生徒会に参加している校内きっての才女で、家庭部にも参加している。
つまり美沙や幸の直接の先輩となる。
実際は生徒会の方が忙しく、部室よりも校内の至る所で事務作業をしていることの方が多いのだが。
サークルを立ち上げる際に部長になった(させられた)順平と、生徒会との手続きの関係で知り合いになった。
口数は多くはないが、その控えめな立ち居振る舞いと清潔感のある雰囲気が人気で、ストレートな黒髪と黒縁の眼鏡がポイント。
「先輩、これから生徒会っすか?」
「うん。でも少しだけね。その後に部活も出るから」
「かーっ。大変っすねぇ」
「そんなことないよ。好きでやってるから。それに生徒会と部活を兼任してるなら、佐山さんや田中さんだってそうでしょ?」
「あー…でもあいつらはまだまだ未熟っすよ」
「そう?二人ともすごくかわいいし」
「でも函南先輩に比べたら、劣る点があり過ぎますもん」
「そ、そんなことないよ…私なんて何も…」
「もーっ、先輩はね、自分の魅力に気付いてないんすよ。勿体ない!」
「そ…そんな…」
「あ、じゃあ俺これから部活なんで、失礼します!」
「あ…うん。頑張ってね…」
「先輩もね!ではまた!」
順平はフランクな性格で、世辞抜きでハキハキと物を言う態度が評判。
小学生の時に剛が転校してきてから、以来の親友。
“分かりにくい”剛と対照的に“分かりやす過ぎる”、“単純なやつ”と言われる順平だが、正義感が強く誰に対しても等しく接する事が出来る部分は何よりの順平の長所。
その性格から、特に女子に人気がある。
函南も、その中の一人なのだが…。