距離〜順平と杏〜-3
「すんません、失礼しゃーす」
「えーっと文化祭用の書類は………あった。ダンス部だよね?」
「あれ、“サークル”で登録したはずなんすけど…」
「……ファイルには“ダンス部”って書いてあるよ…」
「うわっ、マジだ…。あーでも確かにこれです。お借りします」
「新しい用紙はこれだから」
「ありがとうございまーす!」
「うん、どういたしまして…」
生徒会室には函南と順平の二人だけ。
しばし他愛ない会話が進む。
「あのアホ…文化祭の“祭”の字が“際”になってるし…体育館の“館”が“観”に…。よくうちの学校入れたな…。体育観ってあれですかね、体育に関する観念的な感じなんすかね」
「さ…さぁ。凄い間違いしてるね」
「こいつはもうほんと頭悪くて。天然というか。この前なんか弁当の箸忘れて、中庭の木の枝折って箸にしてましたからね」
「へー…す、凄いね…」
「まぁだから一緒にいて飽きないんすけど。あ、ここは俺の名前でいいですか?」
「あ、うん。フルネームでお願い」
「はいっ。…よしっ…」
「順平くんって、高間って苗字なんだね」
「うすっ。そういえば函南先輩って下の名前は…?」
「あ、私はね、杏。あんず、っていうの。言ってなかった?」
「初耳っす!しかしめっちゃ可愛い名前っすね!先輩にピッタリじゃないすか」
「か…可愛いなんて…そ…そんな…そんなことないよ…」
「そんな謙遜しちゃってー。先輩人気あるんすから。俺の周りでも騒いでるやついるんすよっ」
「そんな……」
「………よしっ、と。書きました。これで大丈夫すか?」
「……………」
「せんぱーい?」
「えっ、あっ、ごめんなさい。えーっと……うん、大丈夫だよ。じゃあこれは預かるね。桧山くんには明日私から伝えておくから」
「ありがとうございます!」
「ううん、桧山くんとは同じクラスだから。気にしないで」
「恩に着ます!」
「大袈裟だなぁ。そういえばさ…………、順平くんも女の子に人気あるよね」