SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 @-7
「――元気ないやん?なんかあったん?」
私の態度は自分で意識した以上に不自然だったらしい。
がっちりとしたヤマトの身体が私の前に立ちはだかり、意志の強そうなくっきりとした眉と優しげな鳶色の瞳が、私の目の前に急接近してきた。
そのままキスされてしまいそうな気がして、耳がカアッと熱くなってしまう。
高校生というのは自意識過剰な生き物だ。
よほど自分に自信がなければ、こんなふうに真正面から異性に接近することなんて出来ないだろうと思うけれど、ヤマトはそういうことを自然にサラリとやってしまう。
こういうところがヤマトの魅力でもあり、罪でもあると思う。
その仕種の一つ一つが女の子の目にどんなふうに見えて、どれくらいドキドキさせているかを彼は知らなさすぎる。
「……ちょ…ちょっと風邪気味なだけだよ。それより今日の放課後学級委員会だから、忘れないでよ!」
動揺を悟られないようについぶっきらぼうな口調になって、肩に置かれた手を振りほどいてしまった。
「わかってるって。でも、もしお前しんどかったら先帰ってええで。俺出といたるし」
「だっ…大丈夫だよ。ちゃんと出る……」
「ま、そやな。人一倍責任感強いお前がサボるわけないな」
優しく笑いながらサラリと心をつかむようなことを言うヤマト。
相手が言って欲しい言葉、誉めて欲しいポイントを、この人は本当によくわかっている。
『しずはしっかりしてるね』
小さい時からそう言われて育った。
親からも、友達からも、先生からも、いつも期待されるのは「しっかり者の静奈」。
その期待にこたえるために、私はいつしか自分の本当にやりたいことやわがままを、全て封じ込めるようになっていた。
人よりちょっぴり成績がよくて、ほんの少しだけ面倒見がよかっただけ。
それだけのことで、小学校の頃から私はいつも学級委員長という「キャラ」を割り当てられるようになっていた。
学級委員長というのは学校の「中間管理職」みたいなものだ。