夏の夜のお話・姿見-2
[ んっ… ぁ…
恥ず…かしい… ]
[ もっと感じてごらんよ
一番美しい顔…
自分で見てごらん ]
いやだ…
和也の右手は白い下腹部にある茂みの奥へと伸びた。
[ 奈々絵…
柔らかくてこんなに熱くなって… ]
[ いや…恥ずかし… ]
身をよじりながらもすでにぬめりを帯びたその奥を…
指先の動きに身を捩りながらふと自分の姿に目をやった瞬間…
ほんの一瞬、鏡の中には違う女がいた。
背丈は同じぐらいだけど髪が長くて、赤い口紅だけが目についた。
私はゾッとして鏡を凝視する。
いつもの笑わない私がいた。
[ どうしたんだい? ]
異様に気づいた和也は、首筋に付けた唇で囁く。
[ なんでもない…
こんなの…恥ずかしいから向こうへ行きましょうよ ]
秘部を弄るその腕に手を当てた私はそのしなやかな動きを惜しみながらベッドの上へと誘う。
[ 感じてる自分を見て興奮しないかい? ]
和也にはただの鏡かも知れないけれど、私はこの5年…
ずっと鏡の中で生きてきたのだ。
[ こんなの…いや… ]
それにしても自分が全く他人に見えるなんて…
… … … …
そんな事があって、しばらくしてから私は和也は別れた。
理由は特に語るほどの事でもないつまらない事だった。
和也の方から付き合ってくれと言ったんだし、私が好きになったわけではない。
強いて言えば男のかわりはいくらでもいる…というのが理由だろう。
そして、私はいつしか和也の事もあの日見た鏡の中の女の事も忘れていた。
そしたら偶然会った和也はあの時の幻によく似た女を連れていたのだ。
まさか…
いくらなんでも気のせい。
その時初めて思い出して、そう思ったのだが次の男と車の中でセックスしていて…
ルームミラーにはまた一瞬、違う女が映ったのだ。