距離〜千華からの視点 2 …時々進と義明〜-2
不意に、手を握られた。
「ちょっと…」
「ねぇ、千華さん。もう分かるでしょ?俺、千華さんのこと本気で好きなんだ…」
「…………」
好き。
そんな言葉、久しぶりに聞いた。
それに顔を赤らめながら言う悠斗の表情からして、本気なんだろう…。
「千華ちゃんが剛くんと付き合ってるのは承知してる。だけどその上で、俺と付き合ってほしい」
「…何言ってんのよ…」
「剛くんと別れるまで俺は二番手でも構わない。いつまでも待つから。それまではただのはけ口でも何で、都合良いように俺を使って。それくらい、本気なんだ」
捕まれた手を、離せない…。
そんなの簡単なのに…。
「どんな形であれ、俺は千華さんとお付き合いしたい。剛くんと別れて、俺を一番にしてなんて俺からは言えないけど……それでも剛くんより千華さんを幸せにする自信はあるよ」
「…………」
「もし俺に少しでもチャンスがあるなら、今日このまま一緒に帰ろう。ダメだっていうなら、この手を離して。それっきり俺も諦めるから…」
少し俯きながら、赤い顔して話してる目の前のチビな男。
背は剛よりかなり低いし、男らしいっていうより女の子っぽい顔立ちだし、音楽も詳しくなさそう。
中途半端な茶髪なんか、剛の黒髪には到底敵わないよ。
全部が剛より劣って見える。
なのに…こんなに切ないのはどうして?
「…皆には隠れて付き合うことになるけど…」
「構わないよ」
「陰口叩かれるかも…」
「気にしない」
「もしバレたら大変なことになるよ…」
「それでも良い。全部俺の責任だから」
「…………」
「千華さん…?」
「………………帰ろう」