夏の夜のお話・百年恋詩2-1
私たちの棲家は四条に位置する民家でした。
私も驚いた事に京都の街は百年経た今でもその面影はあまり変わりません。
もちろん、当時は車も路線バスも走ってはいませんが…
四条の街は当時でも賑やかでした。
こんな場所の方が返って怪しまれぬと彼がいうのでした。
私は異次元から来た者。
彼は過剰なまでに周りを警戒していました。
棲家は彼の知り合いの家の離れを借りていました。
結構大きなお屋敷のようでしたが私は一人で外へ出る事を禁じられ、また家の人も必要以上に近づきませんでした。
彼は時々出かける他はずっと私についていてくれました。
故郷の歌を歌ってくれたり、外国の話やこれからの日本の事を聞かせてくれたり…
未来からきた私がもっとどちらの世の中の事に明るかったらもっと彼の役に立てたのですが、新聞も読まなきゃ勉強もしなかった事をつくづく後悔したのです。
ただ…ひとつ役に立てた事は彼は字が書けなかったので、彼の言葉をひらがなで手紙にする事はできました。
その返事はというと、字が汚い上に大きさもまちまちで何書いてあるのかよく分かりません。
私は分かる範囲で読んであげたりしました。
そんな書状を見て、彼は字が読めもしないのに
[ 〇〇殿は流石に達筆よのう… ]
と分かったような口を利くのです。
優しくて可愛くて真っ直ぐな俊…
私はもう帰れない事をだんだんと悟り、この時代に彼と生きて行こうとさえ思っていました。
二人っきりでいたわり合いながら暮らしていて、俊は私を抱こうとはしませんでした。
侍とはそういったものだったのでしょうか?
ある晩、私は俊の眠る布団に潜り込んだのです。
俊は最初、[ はしたない ]などとそれを諭したのですが、私たちはやっとひとつになれた夜でした。
私も実は初めてでしたが昔の男子は共に暮らしていてさえ、セックスの事を何も知りませんでした。
俊は私の乳房が好きでした。
最初のうちは私からふくませてあげなきゃ触ってもくれませんでしたが、とりわけいつまでもあまり大きくもない乳房を飽きずに吸っているのでした。