夏の夜のお話・百年恋詩2-2
愛しくて…
可愛くて…
最初はもちろん痛かったのですが、私から教えてあげなければセックスの事を何も知らないのです。
その頃にはもう…
私は十八にして俊の子供を産むつもりになっていました。
愛しい男に抱かれる事…
ただそんな単純な事に私は体中で感じていたのでした。
現代で誰かと初体験しても、こんな風にはきっと思えなかった事でしょう…
ただ、残念な事に私はついに俊の赤ちゃんを身ごもる事ができませんでした。
妊娠って…
意外にしたい時にはしないものなのでしょうか?
… … … …
俊の先生という方にお会いする事ができたのです。
伊藤先生と言って何でも知ってる方で…
もしかしたら私を帰す方法が分かるのではないかというのです。
私たちの生活も住む家もこの先生が援助してくれていたのでした。
私は正直言ってもう帰りたくはなかった…
正確には帰れると思いたくなかったのです。
[ ほう…ひろ殿と申されたか?
私はもちろんそなたの申す事、戯言とは存ぜぬ ]
[ この娘…
読み書きは元より高等な算術までこなす上、南蛮の言葉も多少心得ております。 ]
先生という方はなるほど、賢そうな温厚な人でいかにも昔の学者といった風で現代の高校生である私の学力にたいへん驚いたのでした。
私は難しい事は分かりませんが、この先生となら話がはずみました。
名前だけは聞いたペリー提督のお話…
アメリカには大統領がいて、民間の代表が政治をするお話…
私もアメリカの大統領がこの前アラブと戦争したお話。
日本とは仲良しでアメリカの基地が横須賀や沖縄にあるお話。
アメリカ製品は高くて、日本は中国や韓国に道具を作らせてるお話。
私たちは眠くなるまで語り合いました。
口をあんぐりと開いて聞いていたのは俊ひとりでした。