心霊ファイル…怨み-4
「吉岡さん、母を助けてくれませんか?」
歩美さんが杏里に嘆願した。
真澄さんが尋ねる。
「助けるって、彼女に何をさせるんだ歩美?」
「決まってるじゃない。 ヒーリングをやってもらうの」
娘さんの話しを聞いて、真澄さんは怪訝な表情をした。
「父さんは信じないぞ、そんな非科学的な事なんかは」
「でも、他に方法はないんだよね?」
「そりゃあないけど…
だからと言って…」
「私は吉岡さんにやってもらいたいって思ってるよ」
歩美さんの希望で、杏里は森田の見舞いも兼ねてルリ子さんにも施しをするようになった。
すると…
思った以上の回復に真澄さんは驚き、歩美さんは大喜びである。
「このまま続けてもらえば、妻の退院は可能かも」と、真澄さんは杏里に期待を寄せるようになった。
ところが思いがけない事になって、回復へのシナリオに狂いが生じた。
その日も杏里は病室を訪れた。
病室には真澄さんや歩美さんの他にもう1人、仁美さんも来ていた。
仁美さん、杏里に対してこう言う。
「吉岡さん、悪いけど…これ以上は母には近づかないでくれる?」
…え?…
耳を疑うような、仁美さんのセリフ。
「お前、何言ってる?」
仁美さんの冷たい態度に真澄さんは呆然。
「どうして、ですか?」
杏里は冷静だ。
「すっごく迷惑だから、余計な事しないで」
「姉ちゃん、理由になってない…」
「歩美は黙っててッ!!」
「…」
自身の言葉を遮るような仁美さんの強い口調に、歩美さんはタジタジになった。
杏里は説得を始める。
「もう一息すれば、お母さんは元気になると思うんです。今ここで施しを止めてしまったら、折角のチャンスが無駄になってしまいます」
頭を下げて頼む杏里。
でも仁美さんはOKしてくれない。
しかも、この部屋への立ち入りまでも断った。